生きづらい世の中です。なんとなく苦しいけど、その原因はわからないという人もいます。でも、自分自身に聞いてみると、生きづらさの原因として、自分自身を縛り付けている鎖が見つかるはずです。まずは、その鎖を見つけ出し、ほどいてみると、心も体も軽くなるかもしれません。
コロナ禍で気づいた「同調圧力」の強さ
何か行動を起こす時に、周囲の目を気にしてしまうことはありませんか?「こんなことを言ったら、どう思われるだろうか」「こんなことに挑戦したいけど、失敗したらどう思われるだろうか」など、自分の言動が、周囲にどう見られるかを気にしないでいることは、なかなか難しいように思われます。
周りに配慮して行動するのは、物事をスムーズに進めるのに役立ちますが、それが行き過ぎてしまうと、個人の自由が侵害されたり、個人の行動が制限される恐れがあります。一人ひとりが周囲の目を気にするあまり、人と違った行動をとる人に対して、厳しい目が向けられることもあります。
新型コロナウイルス感染症の拡大を防ぐためにいくつかの規制が敷かれた時、多くの人々が不自由な経験をしました。規制の中には、はっきりと禁止することを求めたものばかりではなく、自主規制という形で自由が抑制されたこともありました。いわゆる同調圧力です。
同調圧力とは、その意見や行動が正しいか、間違っているかにかかわらず、多数派が少数派に対し、意見や行動を合わせるように強制する無言の圧力のことを言います。同調圧力は世界中にあり、日本特有のものではないといわれていますが、家族や親の意向や考え、伝統、慣習の尊重が求められる東アジア地域は、とくにその圧力が強いとの見方もあります。
強制されたわけでもないのに、自分で自分を押し殺す
同調圧力というほど強い圧力がなくても、何となく、周りに合わせてしまう場合もあります。学校や職場で、自分の意見を表明することが難しい、という問題は、何十年も前から、そう言われてきて、今でもそのような風土をのこした組織が多くあります。
意見を言ってはいけないと強制されているわけではなく、むしろ、自由に発言するように求められているにもかかわらず、「自分の考えがみんなに受け入れられなかったらどうしよう」とか、「みんなと違う意見を言うと、後で不利益を被ってしまうのでは」といった考えを巡らせた結果、自分の意見を表に出すよりも、大勢(たいせい)の意見の方向性や着地点を探して、それに合わせることを無意識にやってしまいます。
その場合、自分がどう思うかよりも、周りがどう思っているのかを見極めることのほうが大切になります。こうした行動のことを「空気を読む」と言われた時代もありました。「学校や職場で、みんなが周囲に合わせることによって、物事がスムーズに運ぶんだったらそれでいいじゃないか」と思う人もいるでしょう。しかし、周囲の目を気にしてばかりで、自分の考えを抑え込むことにストレスを感じる人もいます。同調圧力があふれた社会で生活していると、息苦しさを感じる人もいます。
外の世界だけではない。親しい中にも存在する「同調圧力」
学校や職場など、家の外の世界だけならまだしも、親や家族など、家の中にも同調圧力が存在するならば、「生きづらい」と感じても無理はありません。親や家族の期待に沿うように進路を選んだり、親や家族の意に沿わない人との付き合いをやめたりすると、自分自身がなくなってしまうような、虚しい気持ちになります。
周囲の目を気にすることへの生きづらさは、人生の進路などの大きな決断だけではなく、日々の生活にも入り込んでいます。例えば、服や髪型など外見や容貌、趣味などのあらゆる事柄に対して、周囲から意見を言われる人もいるでしょう。意見を言う人が身近であればあるほど、「あなたのためを思って言っているんだ」といった殺し文句に押されて、思わず自分の意見を引っ込めてしまう人もいるかもしれません。
もちろん、周囲に配慮することは、コミュニティの調和を図るうえでは大事なことです。周囲に迷惑をかけてまで、自分のやりたいことを押し通すべきだとは思えません。しかし、周囲の目を気にしすぎるということを続けていると、「自分軸」で生きることができず、「他人軸」で生きる人生を選んでしまうということに繋がりかねません。 自分自身の価値観をしっかり持って、人生の様々な選択を「自分軸」で行うことができれば、結果がどう転んでも、後悔することはありません。自分の決断が良い結果を生まなかった場合は、何が間違っていたのかを検証して、問題点を改善したうえで、再びチャレンジすればいいからです。
自分軸の決断を繰り返せば、自分に自信がついてくる
一方、誰かに何かを言われることを気にして行った決断は、「他人軸」の決断であり、その決断が良い結果にならなかったときには、何とも言えない残念な気持ちになります。「あの人が言ったとおりにやったのに、うまくいかなかった」と責任を転嫁してしまったり、自分で行った決断でないために、うまくいかなかった原因を見つけることができずに、どう改善すればいいかもわからなくなる恐れもあります。
同調圧力という名の鎖で、生きづらいと感じるなら、まずは、周囲の目を気にしすぎないようにすることが大切です。そのうえで、「自分軸」でものごとを決断することができれば、同調圧力が怖くなくなってくるかもしれません。自分のことを気にかけてくれている周囲の人たちの意見をよく聞くことは大切ですが、そうした意見を聞いたうえで、最終的に決断するのは自分自身です。 周囲の目を気にしすぎないためには、まず、自分のことを一番理解しているのは自分であるという自信を持つこと。また、周囲の評価がどうあれ、自分が何を求めているのかを確認すること。そして、自分の行動に対する結果を受け入れて、次に進むために何が必要かについても自分自身で考えることが重要です。