「多忙は美徳」の価値観がプレッシャーで生きづらい

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「忙しい」の漢字の意味はネガティブだけど…

「忙しい」「忙しい」と口癖のように言っている人が、あなたの周りにもいませんか?忙しいという漢字は「心を亡くす」と書きます。また、とても忙しいことを「忙殺(ぼうさつ)」と言います。「忙しい」にまつわる漢字の意味はネガティブなものが多いですが、なぜか、「忙しいことはいいことだ」と考えている人も少なくないようです。

忙しいが口癖になるほど忙しい人には、いくつかのタイプに分けられます。まずは、忙しいことが充実しているタイプと、忙しいことにストレスを感じているタイプです。この2つのタイプは、自ら望んでやっていることが多忙につながっている場合と、誰かにやらされていることで多忙に追い込まれている場合で、その違いが生まれます。 前者は、好奇心が強かったり、やりたいことが多すぎたり、または、やりたいことをやる中で、やることがたくさんあるようなケースです。やりたいことをやって忙しい場合は、自分から進んで忙しくなっているので、この忙しさが生きづらさの鎖になってしまうようなことはないかもしれません。もし、ストレスを感じたら、自分の体調に合わせて、忙しさを調整すればいいでしょう。

やりたいと思っていないのに、やらされて忙しい人は要注意!

後者は、自分がやりたいとは思っていないのに、それをやるような状況に置かれている人が口にする「忙しい」です。例えば、職場での残業などが典型的な例で、早く帰りたいのに残業をしないと帰れなかったり、休日出勤を求められたりすると、思わず「忙しい」という言葉が口をついて出てきます。また、家庭でも、子育て中の人たちは、睡眠中に起きなければならなかったり、子供の思わぬ行動に振り回されることもあり、逃(のが)れられない「忙しさ」を感じます。 自分の意思ではなく、忙しい状態にいる人は、自分の限界を超えてしまうと、心と体に悪い影響を与える恐れもあるので、注意が必要です。その解決方法は、ケースバイケースですが、周囲の人に助けを求めて、やらなければならないことをシェアしてもらえるような態勢をつくることが大事になります。

「多忙は美徳」の価値観が同調圧力に

この2つとは別に、「忙しい」ことに対する考え方が問題となるケースがあります。つまり、自分自身や周りの人たちが、「忙しいことはいいことだ」という「多忙は美徳」の価値観を持っていると、忙しい場合も、そうでない場合も、この「多忙は美徳」の価値観によって、苦しめられてしまう可能性があります。

「忙しいことはいいことだ」「暇にしているのはみっともない」と考えてしまうと、無理に忙しさを求めてしまいがちです。例えば、スケジュール表がスカスカになっていると、何か予定を入れなければいけないような気持ちになってしまったり、有給休暇を取得する権利を持っているのに、職場の忙しい雰囲気に圧倒されて言い出せなくなることは、多くが経験しているでしょう。

「一生懸命」と「忙しい」はイコールではない

「勤勉」という言葉は、仕事や勉強に一生懸命に励むことを意味しています。仕事であれ、勉強であれ、何であれ、それに向かう姿勢が一生懸命であることは、大事な要素の一つだと思います。一方で、「忙しい」の言葉は、「多くの用事に追われて、暇がないこと」を意味しています。

つまり、勤勉であることと、忙しいこととは意味は違うのですが、多くのシーンではそれが似たような文脈で使われています。「忙しい」と発する言葉の裏には、「一生懸命やっている」「努力をしている」という状態を説明しようとする意図があるように思えます。

この「忙しい」アピールは、「頑張っている」と評価されることを期待している場合もあるでしょうが、そのほかにも、様々な効果を期待しているように思えます。例えば、「仕事をお願いしようとしていたけど、忙しそうだからほかの人にしよう」となって、新たな仕事の負担が回避されることや、「この人の仕事は忙しいそうだから、人員を増やそう」など、チームが増強されることなどの期待もにじんでいるようにも思います。

最近は、「いつも忙しくしているから高い評価が与えられる」という職場は、それほど多くないように思います。それでも、「忙しい」雰囲気にあふれた職場がなくならないのは、「忙しい=一生懸命頑張っている」という価値観の構図が、まだ成り立っていると思い込んでいる人が多いからかもしれません。

「忙しい」という名の鎖で、生きづらいと感じるなら、周囲の人が「忙しい」という言葉を発している背景について、考えてみるとよいでしょう。

自分がやりたいことをやっているから忙しいのか、大量の仕事を無茶振りされているから忙しいのか、忙しいアピールをしているのか、またはその他の理由なのか、そうした背景が理解できると、自分が取りうる対処方法もわかるはずです。その結果、この「忙しい」雰囲気であふれた職場にはついていけないと思ったら、そっとその場を離れてることで、「多忙は美徳」の呪縛からも解放されるかもしれません。