無理に友だちをつくるのはつらい

Essay

新しい生活が始まったとき、または、周りに知っている人が誰もいない新しい土地に引っ越したとき、右も左もわからない不安な気持ちを癒してくれるのは、友だちの存在です。友だちといることで、分からないことを尋ねたり、情報を共有したり、どの道に進むべきなのか、お互いの考え方を聞いて、参考にすることができます。

学校など限定的な空間でベストフレンドが見つかる確率は?

しかし、友だちとの間に、立場の違いや人生の時間軸でのズレが生じると、心強いはずの友だちのことをストレスに感じてしまうことがあります。例えば、あなたにはやるべきことがたくさんあり、友だちはやるべきことを済ませて一息ついているときを考えます。友だちがあなたを誘って、2人で一緒に遊びに行っても、友だちは解放感があって楽しめますが、あなたはやるべきことが頭を離れず、心から楽しむことができないかもしれません。

また、友だちとの間に考え方や価値観の違いがあることを知ってしまうと、友だちとの距離感も違ってきます。例えば、友だちは、たくさんの人と友だちになって、楽しく遊びたいと考えているけど、あなたは心を許せる人と友だちになって、悩み事などを相談したいと考えているとします。その場合、あなたのことを深く知っているわけではない友だちに、悩みを打ち明けることに抵抗を感じるかもしれません。 友だちというと、勤務先や学校などが同じで、同等の相手としてかかわっている人のことをイメージします。つまり、偶然、同じ空間で時間を共にする人と、友だちになる可能性が高いということです。もちろん、ベストフレンドと言える友だちと出会う可能性もありますが、気の合う人が見当たらないという可能性もあります。

「友だち100人できるかな」は重荷だ!

学校に入学すると、先生から、「友だちをたくさんつくりましょう」と言われることがあります。すぐに、友だちができると、安心しますが、なかなか友だちができないと、この先の学校生活がとても不安になります。「誰とでも友だちになれることが、友だちをたくさんつくるためには必要です」と言われると、友だちができないことが、自分のせいではないかと悩んでしまうこともあります。

学校などの限定されたコミュニティでは、友だちづくりが重要な処世術となってしまう場面があります。あらゆる局面で、二人一組・三人一組などのグループ作りを求められ、グループをつくれなかった場合には、孤独を感じたり、自信を無くしてしまったりします。 しかし、考えてみると、偶然、同じ空間で時間を過ごす人たちと友だちになるわけですから、心を許せる仲になるかどうかは、運次第です。気の合う人と出会わない確率も高いわけですから、そんなに焦る必要はないのではないでしょうか。

優越感や劣等感、上下関係が生まれるのは嫌!

友だちと比べたり、比べられたりすることによって、嫌な思いをすることもあります。成績で比べられたり、どっちが人気者であるかなど、さまざまなことで順位付けされてしまうと、どちらかが優越感を感じたり、劣等感を感じることになります。上下関係が生まれてしまうと、友達付き合いが息苦しく感じてしまうときもあるでしょう。

やるべきことをやらずに、ゲームばかりしている友だちといつも一緒にいるとします。二人でいると、何となく罪悪感が薄れて、安心できます。しかし、どちらかがやりたいことが見つかって、ゲームをやめて、その方向に向かい始めると、置いてけぼりにされたような気持ちになってしまうかもしれません。

友だち何人かで何をするのも一緒というグループがあるとします。孤独感はないけど、その代わりに自由がなくなったような気がします。グループと別行動を取りたいけど、なんとなく言い出しにくいということもあるでしょう。

友だちに聞くのもいいけど、まずは自分で考えよう

友だちといると、楽しいけど、一人の時間も大切だと考えている人もいます。誰かと食事をする時間もいいけど、一人で好きなものを食べたいと思ったり、誰かに進むべき道を相談する前に、一人でじっくり考えてみたいと思うこともあるでしょう。

自分軸でものごとを決断することはとても大切です。自分の軸がしっかりしていないと、友だちに相談して、自分のやろうとしていることが否定されてしまうと、自信を無くしてしまいます。友だちに相談することはあってもいいし、時には良いアドバイスをもらえることもあるでしょう。しかし、まずは自分自身の考えや進むべき道を考える力を養うことが大事です。

友だちとよく似た言葉に、「仲間」があります。仲間は、一緒に物事をする間柄のことを指します。似た言葉には「同志」もあります。同志は、漢字がその意味を示すように、志を同じくする人のことを言います。仲間や同志は、何か目的があって、つながりをもつ人たちのことを言うようです。 友だちを無理に作らなくても、何か一生懸命に取り組んでいることがあれば、仲間や同志は、学校やコミュニティの枠にかかわらず、自然に集まってくるものです。そういう仲間や同志と、お互いを尊重しながら、友だちづきあいをすることができれば、孤独感を味わうことはありません。友だちをつくるのが下手でも、何も悩む必要はないのです。