実際に新聞をレイアウトする時は、基本的な技法を知っておく必要があります。今は、ソフトウェアの指示通りにすれば、テンプレートのスタイルであれば形になりますが、基本的な技とルールを知っていると、様々なデザインを描いて、自分だけの新聞を作ることが可能になります。
新聞レイアウト・組版の技法
【流す】
読者の視点に立つと、縦書きの新聞の場合は、記事は右から左、上から下へと読み進めるのが一般的です。逆に、新聞制作側の立場では、新聞の紙面を組み付ける時、写真やデザイン図、見出しなどのスペースを確保し、配置を決めた後、記事を配置します。パソコンなどを使った電子割付では、記事の1行目が始まる場所を指定して実行すると、原稿は右から左へ、そして、段を変えるときは上から下へと流れていきます。まるで、上から流した水が、右から左へ、上から下へと流れていくように見えます。このように、組版に記事を入れる作業のことを、記事を「流す」といいます。
【三つにする】
新聞をレイアウトする時、流した記事を止めた後、次にどのような大きさの見出しや写真を置くのかを考えなければなりません。例えば、三段の見出しと記事を置くときは、流した記事を止める時に「三つにする」ことが必要です。これは記事を縦に三段にまとめて、三段見出しのスペースをあけることです。空いた三段に見出しを置き、そして再び記事を流し始めます。三段にすると、見出しを端の方に置かなければならない事態を避けるには、三つ以上にまとめて、罫線を引き、見出しを置くと良いでしょう。
【正段・ハンパ】
段組みで分けられた、文字をレイアウトする列の一つ一つのことを「段」と言います。日本の多くの新聞では、上下15段で1面が構成されています。「正段組み」とは、この段組みを使って見出しや写真、記事をレイアウトするやり方です。そのほか、「ハコもの」を作るために、三段をハンパの段の2つに分けたりします。この「ハンパ組み」は、一段の文字数を指定してちょうどよいバランスを考えます。
【タタミ(畳み)】
タタミは罫線(ケイセン)を引き、記事を紙面の左右どちらかに寄せ長方形にまとめたものを指します。罫線は記事と記事を区別するための線で、行間ではなく1行分のスペースをとって引き、他の記事から独立した別記事として扱います。記事が四角形にまとまっていると一体感があって読みやすい効果を狙います。論評や解説記事などでよく使われます。
【カコミ(囲み)】
カコミは、罫線で記事を囲んだものを指します。カコミの記事の中では、3段を2つ割にしたり、4段を3つ割にして、流した記事との違いを出します。カコミの中を横書きにすることでも紙面にアクセントがつけられます。連載記事や企画特集記事などは、カコミにすることが効果的で、連載は毎号定位置に置くようにします。囲み方は、1方囲み、2方囲み、3方囲み、4方囲みがあり、天地に罫を入れるだけのケースもあります。タタミとカコミは、「ハコもの」の代表的な存在です。
【渡し組み】
ハコものの記事の中では、渡し組みという技法もよく使います。普通に流した記事は、見出しを右側に置き、その左側から本文が始まって左に読み進みます。この時、記事が見出しや写真などに当たると、水の流れが止まるように、段を下って右端から進みます。これに対して渡し組みの場合は、中央に配置した見出しを飛び越しながら読み進みます。見出しを渡して流す時のサインとして、段間の罫線を抜き、「罫線なし」にします。
紙面レイアウトの基本的なルールとは
縦書きの日本の新聞では、日本語の文章は、上から下へ、右から左へと行をかえて読んでいくのが基本的なルールです。新聞を読む時の人間の視線が、上から下へ、右から左へと流れる習性があるため、紙面の上では右上から左下を結ぶ対角線上が最も目立ちやすい位置になります。
これとは対照的に、紙面の左上と右下は目立ちにくい場所になるので、この位置にカコミやタタミなどの「ハコもの」の記事を配置し、右上から左下の目立つ対角線上に見出しが配置できるようなレイアウトを多用します。これによって、「ハコもの」や写真を、定位置に固定したうえで、目立たせたいニュース記事の見出しを配置し、上から下へ、右から左へと記事を流していきます。この「押えて流す手法」によって、目立たせたいニュース記事を柔軟に配置することができるわけです。「押さえて流す」は紙面づくりの基本で、紙面の隅、端、下に罫線(ケイセン)で押さえたハコものを置き、レイアウトを決め、右上から左下に流し込むのが基本的なレイアウトのパターンです。
実際にレイアウトをする際の手順とは
実際のレイアウトは、集められた記事や写真、イラストなどの素材を吟味し、どの記事と写真をどの面に入れるかという「面割」を決めます。そして、どの記事を一番強調するのか、記事の価値を評価し、トップ記事や二番手などの順位を決めて、紙面の構図をスケッチします。構図ができたら、記事の行数と紙面のスペースとをマッチングし、見出しの大きさやスペース、写真の大きさなどを計算します。そして、記事を流してみて、足りないのか、あふれるのかを全体のバランスをみます。
バランスの取れた紙面のレイアウトにするには
レイアウトするときに大事なことは紙面のバランスです。写真や見出し、イラストなどの配置がバランスを欠くと、美しい紙面にはなりません。記事以外の素材を上下、左右にバランスを取って配置するように心がけます。カコミやタタミの「ハコもの」記事の面積が左右に広がり過ぎて、記事を入れた時に、その流れが窮屈なものにならないように気を付けます。