新聞の見出しには、大きさや文字、形などの別に様々な種類があります。それらの具体的な呼び方は新聞社によって違いますが、カテゴリーごとに示すと次のようになります。
文字の種類による分類
活字見出し
活字見出しとは、記事に使っている文字のフォントを変えて作った見出しのことです。新聞は「倍数」という独特の単位をもとに作られています。2倍、3倍、4倍など、記事の重要性などに合わせて、なるべく活字の文字を大きくします。
皆さんが使っている新聞製作ソフトによって、大きさの単位は違いますので、あまり気にする必要はありません。また、明朝とゴシックの区別もあり、明朝は柔らかいイメージ、ゴシックは固いイメージとなり、紙面のバランスを考えて使い分けます。
トッパン見出し(地紋見出し)
トッパン見出し(地紋見出し)は、活字の見出しよりも、インパクトを持たせたり、飾りを付けるためにデザイン・制作される見出しです。字の色を白抜きにし、見出しの背景に模様があるような効果を出すことができます。
模様の種類も選べます。例えば、「白抜き黒ベタトッパン見出し」は、インパクトのある大ニュースの見出しとして使われます。寸法や書体(明朝、ゴシック)、文字の体裁(白抜き、黒抜き、斜体)、地紋の種類などを指定して、見出しを作ります。
活字見出し
活字見出しは、見出しの段数と活字の大きさによって、何文字入るのかを知っている必要があります。これに対し、地紋見出しは、寸法や書体、文字の体裁などを指定すると、制作することが可能です。
しかし、あまりたくさんの文字を見出しにすると、字が小さくなり、格好悪い見出しになります。また、地紋見出しが一つの紙面に多くあると、強弱がつけにくく、固く重たいイメージを与えてしまうので、活字見出しとのバランスに配慮する必要があります。
大きさ(段数)や置き方による分類
ベタ見出し、3段見出し、横見出し
新聞の見出しは、縦書きの場合は縦見出しが基本です。新聞の紙面は「段」というブロックで構成されており、1ページを15分割したものを15段組み、12分割したものを12段組みなどと呼びます。見出しには段数があり、縦見出しは、1段から2段、3段、4段などの大きさがあります。
ここまでは正段の場合の話ですが、紙面に変化を持たせるため、グリッド(字詰めを変えた記事を入れる枠)を組んで、ハコにした囲みの記事組みもあり、「ハンパ組み」などと呼びます。
その場合は見出しの大きさも、1段や2段などの正段で数えるのではなく、1段半など具体的な見出しの長さを指定します。1段の記事はベタ記事といい、その見出しのことを「ベタ見出し」などと言います。 また、3段の見出しを置きたくても、レイアウト上、置けない場合もあります。
その場合は、見出しを横にして、3段分の幅(行数)の横見出しを配置する方法もあります。また、グリッドのハコ組みの見出しを横に置く場合もあります。
見出しの本数による分類
1本見出し、2本見出し、主見出し、わき見だし
新聞の見出しは、読者に伝えたいことをワンフレーズで言い切る「1本見出し」と、2つの見出しで伝える「2本見出し」などがあります。記事によって使い分けるほか、紙面のスペースによって、本数を変えることもあります。
2本見出しの場合、最も伝えたい記事の主旨を7~9字前後で表現する「主見出し」と、主見出しに続けて、さらに伝えたいことを10字前後で追加する「わき見出し」や、それを補う「割見出し」などもあります。
主見出しよりも前に補足的に置かれる見出しを「肩見出し」と言います。 これらをうまく組み合わせることで、記事への興味を促し、紙面構成のバランスを美しくするための工夫がされています。
記事の内容をいち早く察知してもらうために、「主見出し」だけか、「主見出し」と「袖見出し」をセットで使う方法が一般的です。
2本見出しの並べ方による分類
チドリ型の見出し、並列型の見出し
見出しには文字が同じ数だけ並列するタイプと、左右で大きさが異なるチドリ型のタイプがあります。並列タイプはベタ見出しでよく使われるもので、チドリ型のタイプは2段以上の見出しで使われるのが一般的です。
縦見出しで2本見出しにする場合、右上から左下に斜めになるように配置します。新聞用語でこれを「チドリ見出し」と言います。右側にニュースの中心となる主見出しを付け、左側は右側の内容を補完するような脇見出しを付けるケースが主流です。
主見出しが8、9文字で、わき見だしが10字前後なので、自然に上下にずらしながら配置されます。新聞の見出しではこのチドリ型が美しいとされてきました。
新聞見出しにまつわる暗黙のルール
助詞はなるべく省く
インパクトのある見出しを付けようとすると、少ない字数で語ることが重要です。同じスペースでも、文字数が少なければ、文字が大きくできるからです。短い言葉で多くの要素を盛り込むためには、助詞の「が」や「の」などをなるべく省くようにします。
「戒名見出し」を避ける
その一方で、漢字だけで語っている見出しは極力避けます。漢字ばかりの見出しは「戒名見出し」と言われ、読みにくく、固いイメージになってしまうからです。
例えば、「政治改革法案成立」という見出しは、「政治改革法案が成立」と助詞の「が」をあえて入れることで、「戒名見出し」を避けるようにします。助詞はなるべく避けるのが基本ですが、戒名見出しを避けるためには、助詞を有効に使います。
天地のアキ設け、ツッパリ見出しにしない
バランスの良い見出しにするためには、見出しの天地(上下)のアキに配慮することが重要です。見出しの文字数が多すぎたり、文字が大きすぎて見出しの天地に空白が少ないと、文字がギッシリと詰まって、「突っ張っている」感じを与えてしまいます。
逆に、文字数が少なかったり、文字が小さすぎると、スカスカの感じを与えてしまいます。紙面を読みやすくするうえで、アキは大切ですが、大きすぎても小さすぎても、見た目が悪くなってしまうので、バランスの良い見出しを心がけます。
明朝、ゴシックのバランスにも配慮
美しい見出しとはバランスのとれた見出しです。見出しの文字はゴシック体にすると力強い印象を与え、強調することができますが、すべての文字をゴシック体にすると、堅苦しく
なってしまいます。明朝体を主体にして、ゴシック体は強調したいときだけに使うなど、紙面全体のバランスに配慮します。
このように、見出しには、様々なルールや慣習があります。それぞれの種類の特徴を理解し、バランスよく配置することが重要です。しかし、新聞の見出しには、「こうしなければならない」という決まりはありません。
記事の内容や紙面全体のバランスを考慮しながら、どうすれば読者の目にとまり、読みたいと思わせるような見出しをつけられるのか、アイデアやセンスが大事になります。