分かりやすい文章を書くための心構え
新聞記事を書く前に、文章を書くための基本を確認します。日本語で文章を書くために、改めて学ぶことは多くないと思いますが、普段使っている言葉だからこそ、文章の癖や思い込みで書いてしまうと、間違いやすいものです。基本を再確認し、正確な文章表現を心がけることが重要です。とくに、新聞記事の場合は、分かりやすいことが求められるので、文章の基本に沿って、正しく、簡潔に書くことを意識します。
文章を分かりやすく書くためには、自分が書こうとしている内容を理解していることが前提です。文章を書く人に求められているスキルは、自分の考えや、感じたことを相手に伝えることであり、何を書こうとしているのかについて整理し、分かりやすい言葉で、順序だてて伝えることが大事です。
伝わる文章を書くコツは、言葉を飾って名文を書こうとするのではなく、考えをまとめてストレートに表現することです。秩序だった文章にするには、文章構成を組み立てて、読者が理解しやすいように書くことを心がけます。まずは、日本語の基本や文章表現の作法を確認することが重要です。
一般的な文章の構成パターン
文章構成とは、要点・本文・結論といった文章の要素の組み合わせです。小説やプレゼンテーション、入社試験や受験の論文・小論文、ブログ、スピーチ、メールなど、様々な文章に合わせ、最適な文章構成をうまく使い分けることがポイントです。
一般的な文章の文章構成には、様々な種類がありますが、三段構成、四段構成などが典型的なパターンです。 三段構成は、「序論・本論・結論」のように3つのパートに分かれる構成です。「序論・本論・結論」は、学術論文など、論理的に説明した文章に向いています。「序論」は文章全体を紹介する部分で、どのようなテーマについて書かれているかを説明します。「本論」は具体的な例やデータなどを活用し、主張・意見に対する根拠を示します。「結論」では本論で述べたことをまとめます。
四段構成は、小説など物語文で使われる「起・承・転・結」の構成で知られています。「起」は導入で、「承」は展開、「転」は変化、「結」は締めくくりで、この順番の4つのパートで構成されます。「起」の導入では、必要な予備知識を与えたり、状況について説明したりします。「承」の展開では、導入を引き継いで、さらに情報をしっかり伝えます。「転」の変化では、ストーリーの山場として読み手の感情を盛り上げ、「結」の締めくくりで文章をまとめます。
一方、文章を展開させる上では、いくつかの方式に分類することができます。「頭括式」は、冒頭で結論を述べる構成で、その後に説明や事実、具体例などが続きます。新聞記事は、特にニュース原稿の場合、リード文に結論を述べるという意味では、このパターンを採用しています。逆に、「尾括式」は、最後に結論を述べる構成です。説明・事実・具体例を述べて、結論を提示します。このほか、「双括式」は、頭括式と尾括式を組み合わせた構成です。主張や結論を最初と最後に書く方法で、サンドイッチ型とも言われています。
欧米で主流の文章構成「PREP法」
ビジネス文章は結論や主張、要点を冒頭に書き、その理由や具体例を示し、結論を導く方法が主流です。欧米で広く使われているこの方式は、「PREP法」と呼ばれています。PREP法のPはPointの略で、要点(結論・主張)を示します。RはReasonの略で理由(結論に達した理由・そう主張する理由など)を述べます。EはExampleで具体例(理由に説得力を持たせるための事例・データ・状況)を示します。Pは再びPointの略ですが、締めくくりの要点(結論・主張)を述べます。
PREP法は、伝えたいことや言いたいことを分かりやすく伝える時に書く文章に向いており、汎用性も高いです。しかし、小説や物語を書く場合には、結論を先に述べるので、「ネタばれ」になりかねず、PREP法には向いていません。物語にも様々な表現方法があり、結論を先に示す物語があってもいいですが、読者にワクワク感を持って読み進めてもらうための工夫が必要になるでしょう。 こうした文章構成は、あくまでも基本的なものであり、文章を書くことに慣れてくると、こだわらなくても自然にできるようになります。新聞記事やビジネス文章のように、型にはめたほうが書きやすいケースもありますが、物語などを書くときは型にはめて書いてしまうと、ステレオタイプの文章になってしまい面白味がなくなってしまう恐れもあります。何を書くのか、どのように伝えたいのかを考えて、ケース・バイ・ケースで使い分けることが賢明です。
分かりやすい文章を書くコツ
読みやすい文章を書くための基本は、段落や改行を有効に使い、一文はなるべく短くすることです。また、文体が文章全体で統一されているかについても注意を払うことが必要です。
文章を構成する単位で、あるまとまった内容を表す言語表現を段落と言い、段落は一つ以上の文で構成されています。段落には形式段落と意味段落があります。形式段落とは、行の一字を下げたところから次の改行までのひとまとまりを言います。意味段落とは、いくつかの形式段落を内容的に一つの大きなまとまりにしたものを言います。
この形式段落と意味段落は一致したほうが、文章は読みやすくなります。改行から改行までの一つの形式段落をひとつの内容にするように心がけます。そうすれば、次の段落では話が変わることが読み手にも伝わります。段落を上手く使いこなすことが、分かりやすい文章にする重要なポイントです。
文体には常体と敬体があります。常体とは文末が「だ・である」調のことで、敬体とは文末が「です・ます」調の文章を指します。文章を書くときには、どちらかに統一します。常体にすれば、力強い感じを与え、訴えかける内容の文章を書くときには適しています。また、敬体にすれば柔らかいイメージになり、感じの良い印象を与えます。ニュース記事は「だ・である」調が一般的ですが、大学の学報新聞や広報誌などは「です・ます」調で書かれていることも珍しくありません。
文と文をつなぐ接続詞の使い方も重要です。接続詞を適切に使うことで、文意が伝わりやすくなります。助詞の「が」や「の」を多用すると、一文がだらだらとし、意味も分かりにくくなります。一文のなかに、同じ助詞を何回も使っているものはもたついた感じを与えてしまいます。読みやすい文章にするには、句読点の使い方を意識することが大切で、リズムのある文章を心がけます。
新聞記事の基本スタイル
一般的な文章構成について簡単におさらいしたところで、いよいよ新聞記事の書き方を学んでいきます。新聞記事の基本スタイルは、リードと本文から構成されています。リードは、記事の重要な部分、最も伝えたい部分の要約です。読者はリードで記事の概要をつかみ、記事を読み進めます。概要を掴んでおくことで、スムーズに記事を理解できます。新聞記事の多くは第一段落がリードとして書かれています。そして、新聞記事のスタイルは、「逆三角形」に書かれているのも特徴です。取材の中で一番伝えたいこと(主題、テーマ)を見つけ、そこから書き始めます。
新聞記事のリードの書き方
リードはできるだけ短く、1つの段落に収めるように配慮します。新聞記事は短い時間でニュースの内容が分かることが重要であり、リードの中には見出しを取れる要素も含んで書きます。見出しとは、読者を本文へ引き付け、いざなう看板の役割を果たします。記事の勘所を前もって知らせ、本文を読み進めやすくします。リードを読むと、記事の中身がだいたい想像できるようにするためです。
新聞記事の本文の書き方
本文はニュースの内容を詳しく述べ、補足したり、説明したりすべきものがあればこれを加えます。出来るだけその内容や表現がリードと重複しないように工夫します。記事はその日の紙面の都合やニュース内容の相対的重要度によって、新聞編集者の手で切られ、短くされることがあります。本文が長くなる時は、できるだけ1段落、1節ごとに記述をまとめ、編集者が記事を切りやすくするように心がけます。逆三角形の文体にすることで、記事の編集作業がやりやすくなります。