主語と述語を意識して書く
短く、シンプルに、分かりやすい文章を書くには、主語と述語の関係をはっきりさせることが重要です。主語と述語が対応しているか、主語と述語のどちらかが脱落していないかに注意します。また、主語と述語の位置をなるべく近づけるようにします。主語と述語の間に長い修飾語などの文節を挟むと、文意が取りにくくなってしまうからです。
また、1文中にいくつもの主語、述語を盛り込まないようにします。どの主語と述語が照応しているのかが分かりにくくなり、係り結びが複雑に絡み合ってしまって、文意が伝わりにくくなってしまう恐れがあるからです。修飾語はあまり長くしないようにします。形容詞、副詞は、その係る言葉のすぐ前に持ってきます。
主語と述語が「対」になっていると、文章は簡潔でわかりやすくなります。しかし、主語と述語を意識せずに、考えながら文章を書くと、主語と述語の距離が離れたり、述語があやふやになったりすることがあります。読み手に伝わりやすく、しかも、洗練されている文章を書くコツは、主語と述語の関係性を常に意識することです。
主語と述語は、文章の枠組みを形づくるものです。主語は「何が」「誰が」という文章の主体を示し、述語は「どうする」「どんなだ」など、主語の動作や状態などを表します。主語と述語の関係性を明確にすれば、読み手に伝わりやすい文章になります。
一方で、主語と述語の距離が離れてしまって、どれが主語かわかりにくくなっている場合や、書き手の思い込みだけで主語を省略してしまうと、読み手に文意が伝わらなくなってしまいます。
英文法を学ぶとき、主語(Subject)、動詞(Verb)、目的語(Object)、補語(Complement)を並べた5つの基本文型を習いました。英文を読むときに、その文が「S+V」「S+V+C」「S+V+O」「S+V+O+O」「S+V+O+C」のどのカタチなのかを見極めようとしました。
日本語を読むときも、無意識に主語(S)と述語(動詞、V)を探しているはずです。だから、主語と述語がスムーズに見つからないと、頭の中の理解しようという回路がストップしてしまうのです。書き手としては、読み手が迷子にならないように、主語と述語の関係性をクリアにしておくことが大事です。
主語と述語があいまいでわかりにくいケース
主語と述語の関係が複雑であいまいな文の例1
私は弟が劇場で見たアニメ映画「〇×の逆襲」は「ストーリーが単純だ」と言ったが、原作を知っているのでそう思わない。
この文章が複雑でわかりにくくなっている理由は、主語と述語の関係が明確ではないからです。
- 「ストーリーが単純だ」と言った
- そう思わない
この2つの述語に対応する主語が、「私」なのか「弟」なのかはっきりしないからです。主語と述語を近づけることで、主語・述語の関係を明確にします。
・アニメ映画「〇×の逆襲」は、弟は「ストーリーが単純だ」と言ったが、私は原作を知っているのでそう思わない。
・アニメ映画「〇×の逆襲」は、私は「ストーリーが単純だ」と言ったが、弟は原作を知っているのでそう思わない。
・アニメ映画「〇×の逆襲」は、私は「ストーリーが単純だ」と言ったが、私は原作を知っているので(本心では)そう思わない。 ・アニメ映画「〇×の逆襲」は、弟は「ストーリーが単純だ」と言ったが、弟は原作を知っているので(本心では)そう思わない。
主語と述語をはっきりさせる工夫
主語と述語の関係が複雑であいまいな文の例2
私の弟は、都心の劇場でアニメ映画「〇×の逆襲」を見て「ストーリーが単純だ」と感じたが、私は「〇×の逆襲」の原作本を以前に読んだことがあり、そうは思わなかった。
この文章のテーマは、弟と私の「〇×の逆襲」のストーリーに対する感想の対比です。文章のスタイルを整理して、2文に分けてみると、以下の通りになります。
アニメ映画の「〇×の逆襲」を見た弟の感想は、「ストーリーが単純」だった。これに対し、原作本を読んだ私は、そうは思わなかった。
アニメ映画「〇×の逆襲」を見た弟の感想は、ストーリーが単純だった
原作本「〇×の逆襲」を読んだ私の感想は、そうは思わなかった
こうすると、兄弟の感想の対比の構図がわかります。一方で、弟の「ストーリーが単純」という具体的な感想に対し、私は「そうは思わない」と弟の考えを否定しているだけで、具体性がないことに気付きます。
私の感想を入れることで、この文章のテーマがぐっと際立つことになります。 考えながら文章を書いていると、「私は」とか、「弟は」などのように主語を先に書き、述語は後回しになりがちです。考えながら書いた後で、主語と述語の関係を明確にしてあげる作業が大事になります。
そのひと手間が、分かりやすい文章を書くコツであり、抜け落ちている部分や足りない部分を気付かせてくれることにもつながります。